役員退職給与の適正な金額とは?

法人

役員退職給与の金額について、相当であると認められる金額を超える部分については、費用として認められないこととされています。(法人税法施行令70②)

それでは、この相当であると認められる金額はいくらになるのでしょうか?
この相当であると認められる金額の判断基準について、法令や通達の定めはなく、個々の事例ごとに個別に判断することになります。

裁判例においては、功績倍率法(同業類似法人の役員退職給与の額を最終報酬月額に勤続年数を乗じた額で割って求めた功績倍率を退職役員の最終報酬月額に乗ずる方法)を用いることが多く、最終報酬月額がその退職役員の法人に対する功績の程度を反映していないなど功績倍率法によることが不合理であると認められる場合には、1年あたり平均額法などの別の方法が用いられることがあります。

なお、業績連動給与に該当する役員退職給与については、業績連動給与の損金算入要件を満たす必要がありますが、功績倍率法に基づいて支給する役員退職給与は業績連動給与に該当しないこととされているため、業績連動給与の損金算入要件を考慮する必要はありません。(法人税法基本通達9-2-27の3)

ただし、役員退職の際に譲渡制限付株式等が交付され、株式報酬費用として損金経理が行われるときには、退職給与以外の給与として取り扱われることになるため、事前確定届出給与(注:対象株式は市場価格のある株式のみ)を検討する必要があります。(法人税法基本通達9-2-27の2)

役員退職給与の損金算入時期について

役員退職給与の損金算入の時期は、原則として、株主総会の決議等によりその額が具体的に確定した日の属する事業年度となります。(法人税法基本通達9-2-28本文)

ただし、例外として、法人がその退職給与の額を支払った日の属する事業年度においてその支払った額につき損金経理をした場合には、その支払った日の属する事業年度となります。(法人税法基本通達9-2-28但書)

この例外のケースとしては、役員退職金がみなし相続財産となり相続税を申告する必要があるため、とりあえず取締役会で内定した金額を支給して、翌期に株主総会の決議で確定する場合が考えられます。この場合、株主総会の決議前でまた確定していない段階であっても、役員退職給与を支払った時点で費用とすることが認められます。

なお、退職年金として支給する場合には、その年金を支給すべき時に費用とすべきであって、退職年金の総額を未払金等に計上したとしても、未払金等に相当する金額を費用とすることは認められません。(法人税法基本通達9-2-29)

注意すべき点としては、役員退職給与は退職に伴って支給することを前提としているため、税務調査において退職に伴う支給ではなかったとされた場合には、役員側では退職所得ではなく給与所得として所得税の負担が増加することになります。

また、法人側では役員賞与の扱いとなるため、源泉所得税の納付義務が発生し、不納付加算税が課され、さらに定期同額給与、事前確定届出給与、業績連動給与に該当しないことから支給した金額は費用として認められないことになります。いわゆるトリプルパンチの税負担を強いられることになります。

役員退職給与の支払の際の源泉徴収について

まず「退職所得の受給に関する申告書」を退職する人から提出してもらいます。
そして退職所得控除額を控除して、一定の場合を除き1/2を乗じて、課税退職所得金額を算出します。
その後、源泉徴収税額を算出し、支払日の翌月10日までに源泉所得税を納付します。
また、住民税においても同様に特別徴収し、支払日の翌月10日までに納付します。

最後に

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