有価証券の期末評価について

法人

会社の余剰資金の運用として、法人口座で有価証券を売買するケースがあります。
今回は、期末時点で保有している有価証券における評価損益の税務上の取扱いについてご説明いたします。

有価証券の評価損について

有価証券の評価損については、原則として費用にならないこととされています。(法33Ⅰ)
しかし、有価証券の価額が著しく低下した場合には、評価損について費用となる旨、規定されています。(法33Ⅱ、法令68Ⅰ②イ)
この場合の「著しく低下した場合」については、期末の価額が帳簿価額よりも50%以上下落し、かつ、近い将来その価額の回復が見込まれないこととされています。(法基通9-1-7)

外国株式について

有価証券の評価損

外国株式の場合には、株価と為替レートの2つの要素を加味して著しく低下したか否かを判定することになります。
つまり、期末の外国株式の株価を期末の為替レートで円換算した価額が期末の価額となり、その期末の価額が帳簿価額より50%以上下落し、かつ、近い将来その価額の回復が見込まれない場合には、その評価損について費用となります。

為替レートの変動による評価替え

外貨建資産については、為替レートが著しく変動した場合には、通貨の種類を同じくする外貨建資産及び負債のすべてについて、期末日において外貨建て取引を行ったものとみなし、為替差損益を認識することができます。(法令122の3)
期末時換算法における為替差損益は、翌事業年度において洗替処理が必要となります(法令122の8)が、為替レートが著しく変動した場合における為替差損益は、期末時レートを取得時レートとみなされるため、翌事業年において洗替処理は不要となります。
なお、この場合の「著しく変動した場合」については、おおむね15%以上の為替相場の変動とされています。(法基通13の2-2-10)

売買目的有価証券について

有価証券のうち、売買目的有価証券については、期末の価額と帳簿価額との差額について、強制的に評価替えが行われることになります。(法61の3Ⅱ)
売買目的有価証券については、評価損だけでなく、評価益についても認識する必要があります。そのため、売買目的有価証券の含み益により、決算時に法人税の納税額が増えるデメリットもあるため、注意が必要です。

売買目的有価証券の範囲

単に売買目的で取得したというだけでは、税務上の売買目的有価証券には該当しません。
売買目的有価証券の範囲については、所得税法施行令119の12①において、次のように規定されています。

(売買目的有価証券の範囲)
第百十九条の十二 法第六十一条の三第一項第一号(売買目的有価証券の評価益又は評価損の益金又は損金算入等)に規定する政令で定めるものは、次に掲げる有価証券(第百十九条の二第二項第二号(有価証券の一単位当たりの帳簿価額の算出の方法)に掲げる株式及び出資に該当するものを除く。)とする。
一 内国法人が取得した有価証券(次号から第四号までに掲げる有価証券に該当するものを除く。)のうち、短期的な価格の変動を利用して利益を得る目的(以下この号及び次号において「短期売買目的」という。)で行う取引に専ら従事する者が短期売買目的でその取得の取引を行つたもの(以下この号において「専担者売買有価証券」という。)及びその取得の日において短期売買目的で取得したものである旨を財務省令で定めるところにより帳簿書類に記載したもの(専担者売買有価証券を除く。)

つまり、①専担者売買有価証券、②短期売買有価証券のどちらかの要件を満たすことで、税務上の売買目的有価証券に該当し、期末の価額と帳簿価額との差額について、評価損益を認識することになります。
それでは、以下でそれぞれの要件を確認したいと思います。

専担者売買有価証券

いわゆるトレーディング目的で取得した有価証券で、基本的には、法人が、特定の取引勘定を設けて当該有価証券の売買を行い、かつ、トレーディング業務を日常的に遂行し得る人材から構成された独立の専門部署(関係会社を含む。)により運用がされている場合の当該有価証券がこれに当たるとされています。(所基通2-3-26)

短期売買有価証券

当該有価証券の取得の日に当該有価証券を短期売買目的で取得したものである旨を帳簿価額に記載したものとされています。(所基通2-3-27)
そして、記載方法として、帳簿上「売買目的有価証券」として他の株式とは勘定科目を区分することとされています。(法規27の5Ⅰ)
取得の日において区分記載することとされているため、決算仕訳で科目の振替処理をすることは認められないと考えます。

最後に

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