借家人補償金について

法人

会社が倉庫を借りて使用している場合において、道路拡張計画に基づき、倉庫が収用され、借家人補償金を取得するケースがあります。
今回は、借家人補償金についての法人税と消費税の取扱いについてご説明いたします。

収用の特例における期間制限について

最初に買取り等の申し出のあった日から6か月以内に、収用による資産の譲渡を行った場合には、最高5,000万円を損金の額に算入することが認められます。(措65の2)
この6か月以内という期間制限については、ゴネ得を排除し、公共事業用地の円滑な取得を促進するために設けられたものであると考えられます。
ここでの論点としては、「資産の譲渡」の時期になります。
土地、建物などの譲渡による収益の額は、原則として「引渡しがあった日」の属する事業年度の益金の額に算入することになります。
ただし、「契約の効力発生の日」の属する事業年度の益金の額に算入することも認められます。(法基通2-1-14)
このことから、収用による特例における「資産の譲渡」の時期についても、「契約の効力発生の日」で判断することができるものと考えます。
なお、この点については、国税庁「所得税法における収用等の場合の課税の特例のあらまし(事例2)」において、次のような回答要旨が示されています。

【事例2】「買取り等の申出のあった日」から6か月経過後の引渡し
資産に係る「買取り等の申出の日」から6か月を経過した日までに売買契約を締結している場合は、収用交換等の場合の 5,000 万円の特別控除の適用を受けることができます。
収用交換等の場合の 5,000 万円の特別控除は、公共事業の円滑な施行を促進する観点から、原則として最初に買取り等の申出のあった日から6か月を経過した日までにその申出に係る資産を譲渡した場合に限って適用されることとされています。
この規定の趣旨は、買取り等の申出に応じて早期に資産を譲渡した者を課税上優遇することによって、公共事業用地の早期における円滑な取得を促進するために設けられた規定であると考えられています。
この趣旨から特例の適用を検討すると、買取り等の申出の日から6か月を経過する日までに売買契約を締結している場合は、資産の引渡し時期が買取り等の申出の日から6か月を経過した後であったとしても、既に公共事業用地の早期における円滑な取得に対して協力する意思表示をしていることから、税務上における課税年分の取扱い(引渡しべ一スでの申告・所基通 36-12)によって、特例の適用の適否を判断するのは相当ではないと考えられます。
したがって、「買取り等の申出の日」から6か月を経過した後に資産の引渡しをし、その日の属する年分の譲渡所得として申告したとしても 5,000 万円の特別控除の適用は認められます。

借家人補償金の法人税の取扱い

借家人補償金の定義については、措置法基本通達64(2)-21において次のように記載されています。

(借家人補償金)
64(2)-21 他人の建物を使用している法人が、当該建物が収用等をされたことに伴いその使用を継続することが困難となったため、転居先の建物の賃借に要する権利金に充てられるものとして交付を受ける補償金(従来の家賃と転居先の家賃との差額に充てられるものとして交付を受ける補償金を含む。以下「借家人補償金」という。)については、措置法第64条第2項第2号の場合の対価補償金とみなして取り扱う。この場合において、法人が借家人補償金をもって転居先の建物の賃借に要する権利金に充てたときは、当該権利金に充てた金額を代替資産の取得に充てた金額とみなして取り扱うことができる。
(注) 借家人補償金をもって土地又は建物の取得に充てた場合には、措置法令第39条第4項の規定による代替資産の特例の適用があるものについてはこれによる。

つまり、借家人補償金は、借家権の譲渡対価としての性格はありませんが、借家人補償金に法人税を課税すると、補償財源が目減りするため、借家人補償金を対価補償金とみなして、収用による特例の対象とすることが認められます。

借家人補償金の消費税の取扱い

消費税の課税の対象については、消費税法において次のように規定されています。
国内において事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡や貸付け、役務の提供には、消費税を課する。(消費税法4Ⅰ)
そして、補償金については、消費税法施行令において次のように規定されています。

(資産の譲渡等の範囲)
第二条 法第二条第一項第八号に規定する対価を得て行われる資産の譲渡若しくは貸付け又は役務の提供に類する行為として政令で定めるものは、次に掲げるものとする。
2 事業者が、土地収用法(昭和二十六年法律第二百十九号)その他の法律の規定に基づいてその所有権その他の権利を収用され、かつ、当該権利を取得する者から当該権利の消滅に係る補償金を取得した場合には、対価を得て資産の譲渡を行つたものとする。

そして、ここで規定する「補償金」については、消費税法基本通達において次のように記載されています。

(対価補償金等)
5-2-10 令第2条第2項《資産の譲渡等の範囲》に規定する「補償金」とは、同項の規定により譲渡があったものとみなされる収用の目的となった所有権その他の権利の対価たる補償金(以下5-2-10において「対価補償金」という。)をいうのであり、当該補償金の収受により権利者の権利が消滅し、かつ、当該権利を取得する者から支払われるものに限られるから、次に掲げる補償金は、対価補償金に該当しないことに留意する。
(1) 事業について減少することとなる収益又は生ずることとなる損失の補てんに充てるものとして交付を受ける補償金
(2) 休廃業等により生ずる事業上の費用の補てん又は収用等による譲渡の目的となった資産以外の資産について実現した損失の補てんに充てるものとして交付を受ける補償金
(3) 資産の移転に要する費用の補てんに充てるものとして交付を受ける補償金
(4) その他対価補償金たる実質を有しない補償金
(注) 公有水面埋立法の規定に基づく公有水面の埋立てによる漁業権又は入漁権の消滅若しくはこれらの価値の減少に伴う補償金は、補償金を支払う者はこれらの権利を取得せず、資産の移転がないことから、資産の譲渡等の対価に該当しない。

つまり、借家人補償金は、措置法の適用場面において対価補償金とみなされているだけで、その実質は費用補填であり、対価補償金には該当しないため、消費税の課税対象とはなりません。

最後に

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