別荘の損益通算について

個人

賃貸不動産を所有しているオーナーが、賃貸物件を高値で売却し、多額の譲渡益が発生した場合には、含み損を抱えている別荘を売却することで節税につなげることができます。
今回は、別荘を売却した場合の損益通算についてご説明いたします。

損益通算について

益通算とは、各種所得金額の計算上生じた損失のうち、一定のものについてのみ、一定の順序に従って他の各種所得の金額から控除することをいいます。
一定のものとは、不動産所得・事業所得・譲渡所得・山林所得が該当しますが、一定の居住用財産以外の土地建物等の譲渡所得の損失については損益通算できないこととされています。(措31Ⅰ、32Ⅰ、41の5、41の5の2)
しかし、土地建物等の譲渡所得内での通算(内部通算)については認められています。そのため、今回のケースのように、不動産を売却したことによる譲渡益が発生した場合において、同一年において含み損を抱えている別荘を売却することで節税につなげることができます。
なお、法人への低額譲渡(時価の2分の1未満)における時価でのみなし譲渡(所59、所令169)、個人への低額譲渡(時価の2分の1未満)における譲渡損はなかったものとするみなし規定(所59Ⅱ)により、そもそもの損失計上が認められないケースがあります。
また、著しく低い価額(2分の1基準なし)で譲渡を受ける個人に対するみなし贈与(相7)もあるため、別荘を売却する場合には、売却価額の設定についても注意が必要と考えます。

損益通算できないものとしては、上記のほかに、生活に通常必要でない資産に係る所得の金額の計算上生じた損失、土地を取得するために要した負債の利子(措41の4)、国外中古建物から生じた不動産所得の損失(措41の4の3)などが規定されています。

生活に通常必要でない資産に係る所得の損失について

生活に通常必要でない資産に係る所得の金額の計算上生じた損失は損益通算できないこととされています。
この点については、所得税法において次のように規定されています。

(損益通算)
所得税法
第六十九条 総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額を計算する場合において、不動産所得の金額、事業所得の金額、山林所得の金額又は譲渡所得の金額の計算上生じた損失の金額があるときは、政令で定める順序により、これを他の各種所得の金額から控除する。
2 前項の場合において、同項に規定する損失の金額のうちに第六十二条第一項(生活に通常必要でない資産の災害による損失)に規定する資産に係る所得の金額(以下この項において「生活に通常必要でない資産に係る所得の金額」という。)の計算上生じた損失の金額があるときは、当該損失の金額のうち政令で定めるものは政令で定めるところにより他の生活に通常必要でない資産に係る所得の金額から控除するものとし、当該政令で定めるもの以外のもの及び当該控除をしてもなお控除しきれないものは生じなかつたものとみなす。

この規定によると、生活に通常必要でない資産に係る所得の金額の計算上生じた損失の金額については、競走馬の譲渡に係るもので一定の場合(所令200)を除き、損益通算できないことになります。

生活に通常必要でない資産とは?

それでは、損益通算できないこととされている、生活に通常必要でない資産について確認します。
この点については、所得税法施行令において次のように規定されています。

(生活に通常必要でない資産の災害による損失額の計算等)
第百七十八条 法第六十二条第一項(生活に通常必要でない資産の災害による損失)に規定する政令で定めるものは、次に掲げる資産とする。
一 競走馬(その規模、収益の状況その他の事情に照らし事業と認められるものの用に供されるものを除く。)その他射こう的行為の手段となる動産
二 通常自己及び自己と生計を一にする親族が居住の用に供しない家屋で主として趣味、娯楽又は保養の用に供する目的で所有するものその他主として趣味、娯楽、保養又は鑑賞の目的で所有する資産(前号又は次号に掲げる動産を除く。)
三 生活の用に供する動産で第二十五条(譲渡所得について非課税とされる生活用動産の範囲)の規定に該当しないもの

(譲渡所得について非課税とされる生活用動産の範囲)
第二十五条 法第九条第一項第九号(非課税所得)に規定する政令で定める資産は、生活に通常必要な動産のうち、次に掲げるもの(一個又は一組の価額が三十万円を超えるものに限る。)以外のものとする。
一 貴石、半貴石、貴金属、真珠及びこれらの製品、べつこう製品、さんご製品、こはく製品、ぞうげ製品並びに七宝製品
二 書画、こつとう及び美術工芸品

土地を取得するために要した負債の利子について

不動産所得の損失の金額がある場合において、不動産所得の金額の計算上必要経費に算入した土地等を取得するために要した負債の利子に相当する部分の金額については損益通算の対象となりません。
この点については、租税特別措置法において次のように規定されています。

(不動産所得に係る損益通算の特例)
租税特別措置法
第四十一条の四 個人の平成四年分以後の各年分の不動産所得の金額の計算上生じた損失の金額がある場合において、当該年分の不動産所得の金額の計算上必要経費に算入した金額のうちに不動産所得を生ずべき業務の用に供する土地又は土地の上に存する権利(次項において「土地等」という。)を取得するために要した負債の利子の額があるときは、当該損失の金額のうち当該負債の利子の額に相当する部分の金額として政令で定めるところにより計算した金額は、所得税法第六十九条第一項の規定その他の所得税に関する法令の規定の適用については、生じなかつたものとみなす。
2 建物とともにその敷地の用に供されている土地等を取得した場合における土地等を取得するために要した負債の額の計算その他前項の規定の適用に関し必要な事項は、政令で定める。

(不動産所得に係る損益通算の特例)
租税特別措置法施行令
第二十六条の六 法第四十一条の四第一項に規定する政令で定めるところにより計算した金額は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定める金額とする。
一 その年分の不動産所得の金額の計算上必要経費に算入した法第四十一条の四第一項に規定する土地等(以下この条において「土地等」という。)を取得するために要した負債の利子の額が当該不動産所得の金額の計算上生じた損失の金額を超える場合 当該損失の金額
二 その年分の不動産所得の金額の計算上必要経費に算入した土地等を取得するために要した負債の利子の額が当該不動産所得の金額の計算上生じた損失の金額以下である場合 当該損失の金額のうち当該負債の利子の額に相当する金額
2 個人が不動産所得を生ずべき業務の用に供する土地等を当該土地等の上に建築された建物(その附属設備を含む。)とともに取得した場合(これらの資産を一の契約により同一の者から譲り受けた場合に限る。)において、これらの資産を取得するために要した負債の額がこれらの資産ごとに区分されていないことその他の事情によりこれらの資産の別にその負債の額を区分することが困難であるときは、当該個人は、これらの資産を取得するために要した負債の額がまず当該建物の取得の対価の額に充てられ、次に当該土地等の取得の対価の額に充てられたものとして、法第四十一条の四第一項に規定する土地等を取得するために要した負債の利子の額に相当する部分の金額を計算することができる。

国外中古建物から生じた不動産所得の損失について

国外中古建物の不動産所得があり、国外中古建物の貸付けによる損失のうち、耐用年数を簡便法により計算した国外建物の減価償却費に相当する部分の金額については、損益通算の対象となりません。
この点については、租税特別措置法において次のように規定されています。

(国外中古建物の不動産所得に係る損益通算等の特例)
租税特別措置法
第四十一条の四の三 個人が、令和三年以後の各年において、国外中古建物から生ずる不動産所得を有する場合においてその年分の不動産所得の金額の計算上国外不動産所得の損失の金額があるときは、当該国外不動産所得の損失の金額に相当する金額は、所得税法第二十六条第二項及び第六十九条第一項の規定その他の所得税に関する法令の規定の適用については、生じなかつたものとみなす。
2 この条において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一 国外中古建物 個人において使用され、又は法人(所得税法第二条第一項第八号に規定する人格のない社団等を含む。)において事業の用に供された国外にある建物であつて、個人が取得をしてこれを当該個人の不動産所得を生ずべき業務の用に供したもの(当該不動産所得の金額の計算上当該建物の償却費として同法第三十七条の規定により必要経費に算入する金額を計算する際に同法の規定により定められている耐用年数を財務省令で定めるところにより算定しているものに限る。)をいう。
二 国外不動産所得の損失の金額 個人の不動産所得の金額の計算上国外中古建物の貸付け(他人(当該個人が非居住者である場合の所得税法第百六十一条第一項第一号に規定する事業場等を含む。以下この号において同じ。)に国外中古建物を使用させることを含む。)による損失の金額(当該国外中古建物以外の国外にある不動産、不動産の上に存する権利、船舶又は航空機(以下この号において「国外不動産等」という。)の貸付け(他人に国外不動産等を使用させることを含む。)による不動産所得の金額がある場合には、当該損失の金額を当該国外不動産等の貸付けによる不動産所得の金額の計算上控除してもなお控除しきれない金額)のうち当該国外中古建物の償却費の額に相当する部分の金額として政令(措置法施行令26の6の3)で定めるところにより計算した金額をいう。

最後に

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