事業所得と雑所得の区分について

個人

事業所得として確定申告することで、損益通算や青色申告制度といった事業所得のメリットを受けることができます。
事業所得と雑所得(業務に係る雑所得)の区分については、社会通念で判定することが原則とされており、個々の実態に応じて判断することになるため、税務調査において特に指摘されやすい項目となります。
ここでは、「事業所得のメリット」、「事業所得と雑所得の区分」について、詳しくご説明いたします。

事業所得のメリット

事業所得においては、他の所得と損益通算できることや青色申告制度を利用できるといったメリットがあります。

【損益通算について】

副業が事業所得に該当する場合には、その副業における損失を、給与所得や不動産所得などの他の所得と通算して、税負担を軽減することができます。

【青色申告制度について】

青色申告制度を利用することで、「青色申告特別控除」「青色事業専従者給与」「貸倒引当金」「純損失の繰越しと繰戻し」「少額減価償却」といったメリットを受けることができます。

青色申告特別控除

所得から10万円(一定の場合には、55万円又は65万円)を控除することとされています。(措25の2)

青色事業専従者給与

生計を一にする配偶者その他の親族に支払う給与については、原則として必要経費になりません。(所56) 
しかし、青色申告者の場合には、事前に税務署へ提出した内容に基づき支払った給与については、必要経費となります。(所57)

貸倒引当金

青色申告者は、貸倒引当金の計上による必要経費について、個別評価だけでなく、一括評価(売掛金や貸付金などの年末の帳簿価額に一定割合を乗じて貸倒引当金を計上する)も認められます。

純損失の繰越しと繰戻し

事業所得における損失を損益通算してもなお控除しきれない部分の損失(純損失)については、翌年以後3年間にわたって繰り越して、各年分の所得金額から控除することができます。(所70)
また、前年も青色申告をしている場合には、純損失の繰越控除に代えて、その損失が生じた年の前年に繰り戻して、前年分の所得税の還付を受けることができます。(所140)

事業所得と雑所得の区分について

事業所得と認められるかどうかは、その所得を得るための活動が、社会通念上事業と称するに至る程度で行っているかどうかで判定する旨、所得税法基本通達35-2注書きにおいて記載されています。
そして、この「社会通念」によって判定する場合には、「営利性・有償性の有無、継続性・反復性の有無、自己の危険と計算における企画遂行性の有無、その取引に費した精神的あるいは肉体的労力の程度、人的・物的設備の有無、その取引の目的、その者の職歴・社会的地位・生活状況など(東京地判S48.7.18)」の諸点を総合勘案して判定することとされています。
そのうえで、「帳簿書類の保存」「収入金額」の2つの要素をもとに、事業所得と雑所得の区分について一定の基準が示されています。(雑所得の範囲の取扱いに関する所得税基本通達の解説)

(1)帳簿書類の保存がある場合

帳簿書類の保存がある場合には、一般的に事業所得に区分されるものと考えられます。
ただし、「収入金額が僅少と認められる場合」又は「営利性が認められない場合」には、個別に事業所得か否かについて判断することとなります。

「収入金額が僅少と認められる場合」

その所得の収入金額が、例年(概ね3年程度の期間)300万円以下で、主たる収入に対する割合が10%未満の場合は、収入金額が僅少と認められる場合に該当すると考えられます。

「営利性が認められない場合」

その所得が例年赤字で、かつ、赤字を解消するための取組を実施していない場合(収入を増加させる、あるいは、所得を黒字にするための営業活動等を実施していない場合)は、営利性が認められない場合に該当すると考えられます。

(2)帳簿書類の保存がない場合

帳簿書類の保存がない場合には、一般的に雑所得(業務に係る雑所得)に区分されるものと考えられます。
ただし、収入金額が300万円を超えるような規模であれば、帳簿書類の保存がなくても、ほかに事業所得と認められる事実がある場合には、事業所得として取り扱うこととされています。
なお、「収入金額300万円」という基準については、前々年の収入金額が300万円を超える場合には、取引に関する書類の保存が義務付けられている(所232Ⅱ)ことを踏まえたものになります。

最後に

弊所は、お客様と共に悩み、考え、お客様の成長と発展に貢献できる経営パートナーとしてのサービスをご提供いたします。
お気軽に当事務所にお問い合わせください。
      ⇩
税理士小林繁樹事務所のホームページ

免責事項
本記事を掲載するにあたって、情報の正確性について細心の注意を払っておりますが、その内容を保証するものではなく、何らの責任を負うものではありません。
必ずしも内容の全部を表現したものではないため、実務における判断を行う際は、必ず専門家にご相談ください。

タイトルとURLをコピーしました