圧縮記帳と減価償却について

法人

事業再構築補助金やものづくり補助金など、新たに設備投資を行い、採択されることで国庫補助金等の交付を受けることができます。
今回は、国庫補助金の額よりも固定資産の取得・改良に要した額のほうが大きい場合において、圧縮記帳の処理をした後でもなお、帳簿価額が残っている場合の減価償却の取扱いについてご説明いたします。

圧縮記帳について

固定資産の取得や改良に充てるために国庫補助金等の交付を受け、その交付の目的に適合した固定資産を取得・改良した場合には、圧縮限度額(法人税法施行令79の2)の範囲内で損金の額に算入することが認められます。(法42Ⅰ)

(国庫補助金等で取得した固定資産等の圧縮額の損金算入)
法人税法
第四十二条 内国法人(清算中のものを除く。以下この条において同じ。)が、各事業年度において固定資産の取得又は改良に充てるための国又は地方公共団体の補助金又は給付金その他政令で定めるこれらに準ずるもの(以下第四十四条までにおいて「国庫補助金等」という。)の交付を受けた場合(その国庫補助金等の返還を要しないことが当該事業年度終了の時までに確定した場合に限る。)において、当該事業年度終了の時までに取得又は改良をしたその交付の目的に適合した固定資産につき、当該事業年度においてその交付を受けた国庫補助金等の額に相当する金額(その固定資産が当該事業年度前の各事業年度において取得又は改良をした減価償却資産である場合には、当該国庫補助金等の額を基礎として政令で定めるところにより計算した金額。以下この項において「圧縮限度額」という。)の範囲内でその帳簿価額を損金経理により減額し、又はその圧縮限度額以下の金額を当該事業年度の確定した決算において積立金として積み立てる方法(政令で定める方法を含む。)により経理したときは、その減額し又は経理した金額に相当する金額は、当該事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入する。

(国庫補助金等の交付前に取得した固定資産等の圧縮限度額)
法人税法施行令
第七十九条の二 法第四十二条第一項(国庫補助金等で取得した固定資産等の圧縮額の損金算入)に規定する政令で定めるところにより計算した金額は、その交付を受けた同項に規定する国庫補助金等の全部又は一部の返還を要しないことが確定した日における同項に規定する固定資産の帳簿価額(改良の場合にあつては、その改良に係る部分の帳簿価額)に第一号に掲げる金額のうちに第二号に掲げる金額の占める割合を乗じて計算した金額とする。
一 当該固定資産の取得又は改良をするために要した金額
二 その返還を要しないこととなつた当該国庫補助金等の額

減価償却について

中小企業者においては、少額減価償却資産の損金算入の特例が認められます。
事業の用に供した事業年度において、損金経理及び明細書添付をすることで、取得価額が30万円未満の資産については、即時に費用とすることが認められます。
ただし、適用を受ける事業年度において、少額減価償却資産の取得価額の合計額300万円が上限となります。
この点については、措置法において次のように規定されています。

(中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例)
第六十七条の五 中小企業者等(第四十二条の四第十九項第七号に規定する中小企業者(同項第八号に規定する適用除外事業者に該当するものを除く。)又は同項第九号に規定する農業協同組合等で、青色申告書を提出するもの(通算法人を除く。)のうち、事務負担に配慮する必要があるものとして政令で定めるものをいう。以下この項において同じ。)が、平成十八年四月一日から令和六年三月三十一日までの間に取得し、又は製作し、若しくは建設し、かつ、当該中小企業者等の事業の用に供した減価償却資産で、その取得価額が三十万円未満であるもの(その取得価額が十万円未満であるもの及び第五十三条第一項各号に掲げる規定の適用を受けるものその他政令で定めるものを除く。以下この条において「少額減価償却資産」という。)を有する場合において、当該少額減価償却資産の取得価額に相当する金額につき当該中小企業者等の事業の用に供した日を含む事業年度において損金経理をしたときは、その損金経理をした金額は、当該事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入する。この場合において、当該中小企業者等の当該事業年度における少額減価償却資産の取得価額の合計額が三百万円(当該事業年度が一年に満たない場合には、三百万円を十二で除し、これに当該事業年度の月数を乗じて計算した金額。以下この項において同じ。)を超えるときは、その取得価額の合計額のうち三百万円に達するまでの少額減価償却資産の取得価額の合計額を限度とする。

圧縮記帳と少額減価償却資産の特例の併用について

少額減価償却資産の特例については、措置法の規定により認められる制度になります。そして、収用により代替資産を取得した場合の圧縮記帳(措64Ⅰ)のように、措置法の規定に基づく圧縮記帳の規定の適用を受ける減価償却資産については、適用除外とされています。(措67の5、措令39の28Ⅱ)
一方、国庫補助金等で固定資産を取得した場合の圧縮記帳(法42)については、法人税法の規定により認められる制度になります。
そして減価償却資産の取得価額については、法人税法の規定による圧縮記帳した後の残額を取得価額とみなすこととされているため、法人税法の圧縮記帳後の残額が30万円未満であれば、少額減価償却資産の特例の適用を受けることが認められます。
つまり、少額減価償却資産の特例については、措置法の圧縮記帳との併用は認められませんが、法人税法の圧縮記帳との併用は認められます。
なお、10万円未満の少額減価償却資産(法令133)、一括償却資産(法令133の2)の適用については、措置法の圧縮記帳との併用及び法人税法の圧縮記帳との併用、いずれも認められます。
措置法の圧縮記帳については、法人税に関する法令の規定を適用する場合には、圧縮記帳により損金に算入した金額は資産の取得価額に算入しないこととされています。(措64Ⅷ、65の7Ⅷ)

最後に

弊所は、お客様と共に悩み、考え、お客様の成長と発展に貢献できる経営パートナーとしてのサービスをご提供いたします。
お気軽に当事務所にお問い合わせください。
      ⇩
税理士小林繁樹事務所のホームページ

免責事項
本記事を掲載するにあたって、情報の正確性について細心の注意を払っておりますが、その内容を保証するものではなく、何らの責任を負うものではありません。
必ずしも内容の全部を表現したものではないため、実務における判断を行う際は、必ず専門家にご相談ください。

タイトルとURLをコピーしました