印紙税における営業者とは?

印紙税

印紙税の課税物件である7号文書「継続的取引の基本となる契約書」については、1通につき4,000円の印紙税が課せられています。(印別表1Ⅵ⑰)
ここでは、7号文書「継続的取引の基本となる契約書」の要件である、「営業者の間における契約」の内容についてご説明いたします。

営業者の定義について

7号文書「継続的取引の基本となる契約書」の範囲については、印紙税法施行令において次のように規定されています。

(継続的取引の基本となる契約書の範囲)
第二十六条 法別表第一第七号の定義の欄に規定する政令で定める契約書は、次に掲げる契約書とする。
一 特約店契約書その他名称のいかんを問わず、営業者(法別表第一第十七号の非課税物件の欄に規定する営業を行う者をいう。)の間において、売買、売買の委託、運送、運送取扱い又は請負に関する二以上の取引を継続して行うため作成される契約書で、当該二以上の取引に共通して適用される取引条件のうち目的物の種類、取扱数量、単価、対価の支払方法、債務不履行の場合の損害賠償の方法又は再販売価格を定めるもの(電気又はガスの供給に関するものを除く。)

ここでは、営業者の定義について、「法別表第一第十七号の非課税物件の欄に規定する営業を行う者をいう」と規定されています。
そして、法別表第一第十七号の非課税物件の欄において、次のように規定されています。

印紙税法別表第一第十七号非課税物件欄2
営業(会社以外の法人で、法令の規定又は定款の定めにより利益金又は剰余金の配当又は分配をすることができることとなつているものが、その出資者以外の者に対して行う事業を含み、当該出資者がその出資をした法人に対して行う営業を除く。)

ここでの「営業」の意義については、国税庁の質疑応答事例において次のように記載されています。

【質疑応答事例】営業の意義
一般通念では、利益を得る目的で、同種の行為を継続的、反復的に行うことをいいます。営利目的がある限り、現実に利益を得ることができなかったとしても、また、当初、継続、反復の意思がある限り、1回でやめたとしても営業に該当します。
具体的にどのような行為が営業に該当するかは、商法の規定による商人と商行為から考えられます。
商人には、自己の名をもって商行為をすることを業とする固有の商人と、店舗その他これに類する設備(商人的施設)によって物品の販売を業とする者及び鉱業を営む者を商人とみなす擬制商人とがあります(商法第4条)。
商行為は商法に列挙されていますが、営業とすると否とにかかわらず商行為とする絶対的商行為(商法第501条)と、営業としてしたものは商行為とする営業的商行為(商法第502条)及び商人がその営業のためにする行為を商行為とする附属的商行為(商法第503条)があります。更に、特別法による商行為として、信託の引受け、無尽業等があります。
このことから、これらの行為をなすことを業とするものは商人となり、営利を目的として同種の行為を反復継続する場合は営業に該当することになります。
したがって、商行為に該当しない医師、弁護士等の行為は営業にはならず、また、農業、漁業等の原始生産業者が店舗をもたずにその生産物を販売する場合も商人の概念から除かれますので営業にはなりません。
また、商法第502条ただし書に「専ら賃金を得る目的で物を製造し、又は労務に従事する者の行為は、この限りでない」と規定されていることから、サラリーマン、内職などの行為も営業にはなりません。
法人の場合には、私法人は、大別すると営利法人、公益法人及びそれら以外の法人に分けられます。
営利法人である、会社法の規定による株式会社、合名会社、合資会社又は合同会社がその事業としてする行為及びその事業のためにする行為は商行為であり(会社法第5条)、すべて営業(資本取引に係るものなど特に定めるものは除かれます。)になります。
公益社団法人、公益財団法人、学校法人などの公益法人については、その法人が目的遂行のために必要な資金を得るための行為が商行為に該当する場合であっても営業には該当しません。
営利法人及び公益法人以外の法人については、印紙税法では、その事業の実態等を考慮して、会社以外の法人で、利益金又は剰余金の配当又は分配をすることができることとなっている法人が、出資者以外の第三者に対して行う事業は、営業に含むこととなっています(出資者に対して行う事業は、営業に含みません。)。
また、特定非営利活動促進法により設立が認められた、特定非営利活動法人(いわゆるNPO法人)は、定款の定めにより、利益金又は剰余金の配当又は分配ができないこととされている場合は、営業には該当しません。

営業者の区分ごとの取扱いについて

(1)会社

会社がその事業としてする行為及びその事業のためにする行為は商行為と規定されています。(会5)
また、会社の定義については、株式会社、合名会社、合資会社又は合同会社をいうと規定されています。(会2①)
つまり、株式会社、合名会社、合資会社、合同会社が事業としてする行為及び事業のためにする行為は、すべて営業となり、7号文書の要件である営業者に該当することになります。

(2)会社以外の法人

公益法人については、公益目的事業を行うことを主たる目的とし、営利を目的とする法人ではないため、公益法人の行為はすべて営業にならず、7号文書の要件である営業者に該当しないことになります。

一般社団法人・一般財団法人については、営利を目的とする法人ではないため、たとえ定款の定めがあっても、社員や設立者に剰余金や残余財産の分配を受ける権利を与えることはできないことと規定されています。(一般11Ⅱ、153Ⅲ②)
そのため、7号文書の要件である営業者に該当しないことになります。

農業協当組合・信用金庫・消費生活協同組合などの法人については、法令の規定又は定款の定めにより利益金又は剰余金の配当又は分配をすることができることになっているため、出資者以外の者との間で売買等の取引を行う行為は営業となり、7号文書の要件である営業者に該当することになります。
一方、出資者との間で売買等の取引を行う行為は営業には該当せず、7号文書の要件である営業者に該当しないことになります。

税理士法人等については、税理士法において利益の配当をすることができることとされているため、出資者以外の者との間で行う行為は営業となり、7号文書の要件である営業者に該当することになります。
一方、出資者との間で行う行為は営業に該当せず、7号文書の要件である営業者に該当しないことになります。

(3)個人

「商人」としての行為は営業になり、その個人は営業者となります。
なお、法人とは異なり、個人の税理士や司法書士などの行為は、一般に営業には該当しないこととされているため、7号文書の要件である営業者に該当しないことになります。

(4)人格のない社団

人格のない社団が収益事業に関して行う行為は営業になり、7号文書の要件である営業者に該当することになります。

営業者間の取引について

営業者間の意義については、印紙税法基本通達において次のように記載されています。

印紙税法基本通達別表第一7号文書3
(営業者の間の意義)
3令第26条第1号に規定する「営業者の間」とは、契約の当事者の双方が営業者である場合をいい、営業者の代理人として非営業者が契約の当事者となる場合を含む。
なお、他の者から取引の委託を受けた営業者が当該他の者のために第三者と行う取引も営業者の間における取引に含まれるものであるから留意する。

つまり、契約の締結権を与えられた個人の弁護士が、契約の当事者となって契約する場合で、その契約の効果が直接的に営業者に帰属する場合には、営業者間の取引に該当することになります。

非営業者が作成する契約書について

非営業者が作成する契約書については、7号文書「継続的取引の基本となる契約書」には該当しないことになります。
ただし、契約内容が請負に関するものや運送に関するものである場合には、2号文書や1号の4文書に該当し、印紙税の納税義務が生じることになります。

最後に

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