役員報酬を下げるデメリットとは?

法人

思ってたよりも売上が不調で、このままいくと今期は赤字になりそうだから、事業年度の途中で役員報酬を下げて黒字にしよう。
でも、事業年度の途中で役員報酬を変更するとデメリットがあると聞いたけど・・・。
このようにお悩みの方へ、役員報酬を下げるデメリットについて、以下でご説明いたします。

役員報酬を下げるデメリットについて

役員報酬は原則として、費用とは認められません。
あくまでも例外として、①定期同額給与、②事前確定届出給与、③業績連動給与の3つに限定して費用とすることが認められています。
役員報酬を自由に増減することで利益操作が行われることを防ぐためです。
例外の要件を満たすことなく、事業年度の途中で不用意に役員報酬を下げると、それだけ費用として認めあれる金額が減ることになり、納める税金の額が増えるといったデメリットが生じることになります。
それでは、以下で例外の規定についてご説明いたします。

【1】定期同額給与

定期同額給与については、法人税法34Ⅰ①において、「その支給時期が一月以下の一定の期間ごとである給与で当該事業年度の各支給時期における支給額が同額であるものその他これに準ずるものとして政令で定める給与」と定義されています。

つまり、定期同額給与は、1月以下の期間を単位として規則的に反復又は継続して支給されるものをいいます。
そのため、例えば、非常勤役員に対し年俸又は事業年度の期間俸を年1回又は年2回所定の時期に支給するようなものは、たとえその支給額が各月ごとの一定の金額を基礎として算定されているものであっても、定期同額給与には該当しないとされています。(法人税法基本通達9-2-12)

一方、継続的に役員に供与する経済的利益については、その供与される利益の額が毎月おおむね一定であるものは定期同額給与に該当します。(法人税法69Ⅰ②)
この「供与される利益の額が毎月おおむね一定」かどうかについては、法人が負担した費用の支出時期によるのではなく、その役員が現に受ける経済的利益が毎月おおむね一定であるかどうかにより判定するとされています。(H19.3.13付通達改正趣旨説明)
たとえば、グリーン車の6か月定期券を役員に支給している場合や役員が負担すべき生命保険料を年払契約としている場合には、法人の負担する費用が毎月支出するものでなくても、定期同額給与に該当することになります。

このように、役員報酬については、その事業年度を通じて支給額が同額の場合に、定期同額給与として費用とすることが認められます。

定期同額給与の改定

以下の3つの場合においては、事業年度の途中に役員報酬を変更しても、定期同額給与として取り扱うこととされています。

(1)通常改定(法人税法施行令69Ⅰ①イ)

事業年度開始の日から原則として3月経過日までに改定が行われた場合において、改定前の各支給時期の支給額が同額で、改定後の支給額の各支給時期の支給額が同額であれば、
「その他これに準ずるものとして政令で定める給与」に該当し、定期同額給与として取り扱われることになります。

(2)臨時改定(法人税法施行令69Ⅰ①ロ)

役員の職制上の地位の変更、その役員の職務の内容の重大な変更その他これらに類するやむを得ない事情(臨時改定事由)により改定が行われた場合において、改定後の支給額の各支給時期の支給額が同額であれば、「その他これに準ずるものとして政令で定める給与」に該当し、定期同額給与として取り扱われることになります。
この臨時改定事由については、法人税法基本通達9-2-12の3において、以下のものが例示されています。

  1. 定時株主総会後、次の定時株主総会までの間において社長が退任したことに伴い臨時株主総会の決議により副社長が社長に就任する場合
  2. 合併に伴いその役員の職務の内容が大幅に変更される場合

(3)業績悪化改定(法人税法施行令69Ⅰ①ハ)

経営の状況が著しく悪化したことその他これに類する理由(業績悪化改定事由)により減額の改定が行われた場合において、改定後の支給額の各支給時期の支給額が同額であれば、「その他これに準ずるものとして政令で定める給与」に該当し、定期同額給与として取り扱われることになります。
業績悪化改定事由の具体例として、国税庁では次の場合を例示しています。

  1. 株主との関係上、業績や財務状況の悪化についての役員としての経営上の責任から役員給与の額を減額せざるを得ない場合
  2. 取引銀行との間で行われる借入金返済のリスケジュールの協議において、役員給与の額を減額せざるを得ない場合
  3. 業績や財務状況又は資金繰りが悪化したため、取引先等の利害関係者からの信用を維持・確保する必要性から、経営状況の改善を図るための計画が策定され、これに役員給与の額の減額が盛り込まれた場合

なお、一時的な資金繰りの都合や、単に業績目標値に達しなかったことだけでは、「業績悪化改定事由」には該当しないとされています。(法人税法基本通達9-2-13)

【2】事前確定届出給与

事前に届出をした内容に基づき、所定の時期に所定の金額を支給した場合に、費用とすることが認められます。
この事前の届出書については、以下のいずれか早い日までに税務署長に提出する必要があります。(法人税法施行令69Ⅳ①

  1. 株主総会等の決議をした日から1か月を経過する日
  2. 当該役員の職務執行の開始の日から1か月を経過する日
  3. 事業年度開始の日から4か月を経過する日

なお、事前確定届出給与についても、定期同額給与と同様に、「臨時改定事由」「業績悪化改定事由」による変更が認められています。(法人税法施行令69Ⅳ②、69Ⅴ)

【3】業績連動給与

対象法人が、「同族会社以外の法人」、「同族会社にあっては、同族会社以外の法人との間にその法人による完全支配関係があるもの」に限定されています。

【参考】定期同額給与、事前確定届出給与の要件を満たさない場合の取扱い

定期同額給与については、事業年度の途中での変更は、通常改定、臨時改定、業績悪化改定の3つに限定されます。
3つの改定における要件を満たさない役員報酬の変更については、基本的には上乗せ支給部分だけが損金不算入となりますが、それは毎月の給与が「各支給時期における支給額が同額であるものその他これに準ずるもの」に該当する場合に限られるものと考えます。毎月の支給額が変動する場合にはその全額が定期同額給与に該当しないことになるものと考えます。

事前確定届出給与については、届出書の内容に基づかない支給額は全額費用として認められないことになります。
なお、届出書の内容通りに支給したか否かの判定は役員ごとに行うこととされています。
つまり、支給対象者が2人以上いる場合において、特定の役員について届出書の内容と異なる支給を行った場合でも、他の役員について届出書の内容に従って支給している場合には、他の役員についての支給額については、費用とすることが認められます。(質疑応答事例)

【参考2】役員報酬を下げるのではなく、役員が役員報酬の受領を辞退した場合の取扱い

役員報酬の受領を辞退した時期に応じて取扱いが異なるため、(1)支給期の到来前に辞退した場合、(2)支給期の到来後に辞退した場合の2つに分けてご説明いたします。

(1)支給期の到来前に辞退した場合

「給与等の支払を受けるべき者がその給与等の全部又は一部の受領を辞退した場合には、その支給期の到来前に辞退の意思を明示して辞退したものに限り、課税しないものとする。」とされています。(所得税法基本通達28-10
よって、支給期の到来前に辞退した場合には、役員側においては役員報酬の支払請求権が発生しないため給与所得にならず、法人側においてあ役員報酬の支払義務が発生しないため源泉所得税の納付義務も発生しません。

(2)支給期の到来後に辞退した場合

支給期の到来によって役員側では報酬の支払請求権が発生するため、支給期の到来後に辞退しても、役員側では給与収入を認識することになります。
一方、法人側では報酬の支払義務が発生したうえ、債務免除を受けたものとして取扱われることになります。

  • 源泉所得税
    原則として、辞退(債務免除)を受けたときにおいてその支払があったものとして源泉所得税の納付義務が発生します。(所得税法基本通達181~223共-2)
    なお、例外として特殊な事情の下で辞退がなされた場合には源泉徴収は不要とされています。(所得税法基本通達181~223共-3)
  • 債務免除益
    役員報酬の受領について辞退があったことにより、法人側においても役員報酬の支払債務の免除を受けたことになるため、原則として、債務免除益を認識することになります。
    辞退の対象となった役員報酬が事前確定届出給与の場合には、役員報酬が費用として認められず、原則として同額の債務免除益が計上されることになるため、納める税金の額は増えることになってしまいます。
    なお、例外として会社の整理、業績不振などの一定の条件の下で辞退がなされた場合には、債務免除益を計上しないことができます。(法人税法基本通達4-2-3)

最後に

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本記事を掲載するにあたって、情報の正確性について細心の注意を払っておりますが、その内容を保証するものではなく、何らの責任を負うものではありません。
必ずしも内容の全部を表現したものではないため、実務における判断を行う際は、必ず専門家にご相談ください。

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