非居住者への課税について

個人

個人に対する課税については、居住者と非居住者に分けて、課税の範囲、課税方法が規定されています。
ここでは、非居住者の課税の取扱いについてご説明いたします。

非居住者に対する課税の範囲

非居住者に対する課税の範囲については、国内源泉所得に限ることとされています。
このことは、所得税法5条2項1号において次にように規定されています。

(納税義務者)
第五条 
2 非居住者は、次に掲げる場合には、この法律により、所得税を納める義務がある。
一 第百六十一条第一項に規定する国内源泉所得を有するとき。

国内源泉所得とは?

国内源泉所得については、所得税法161条で規定されており、次のようなものが該当します。
(1) 恒久的施設帰属所得、国内にある資産の運用または保有により生ずる所得、国内にある資産の譲渡により生ずる所得(①②③)
(2) 組合契約等に基づいて恒久的施設を通じて行う事業から生ずる利益で、その組合契約に基づいて配分を受けるもののうち一定のもの(④)
(3) 国内にある土地、土地の上に存する権利、建物および建物の附属設備または構築物の譲渡による対価(⑤)
(4) 国内で行う人的役務の提供を事業とする者の、その人的役務の提供に係る対価(⑥)
例えば、映画俳優、音楽家等の芸能人、職業運動家、弁護士、公認会計士等の自由職業者または科学技術、経営管理等の専門的知識や技能を持つ人の役務を提供したことによる対価がこれに当たります。(所令282)
(5) 国内にある不動産や不動産の上に存する権利等の貸付けにより受け取る対価(⑦)
(6) 日本の国債、地方債、内国法人の発行した社債の利子、外国法人が発行する債券の利子のうち恒久的施設を通じて行う事業に係るもの、国内の営業所に預けられた預貯金の利子等(⑧)
(7) 内国法人から受ける剰余金の配当、利益の配当、剰余金の分配等(⑨)
(8) 国内で業務を行う者に貸し付けた貸付金の利子で国内業務に係るもの(⑩)
(9) 国内で業務を行う者から受ける工業所有権等の使用料、またはその譲渡の対価、著作権の使用料またはその譲渡の対価、機械装置等の使用料で国内業務に係るもの(⑪)
(10) 給与、賞与、人的役務の提供に対する報酬のうち国内において行う勤務、人的役務の提供に基因するもの、公的年金、退職手当等のうち居住者期間に行った勤務等に基因するもの(⑫)
(11) 国内で行う事業の広告宣伝のための賞金品(⑬)
(12) 国内にある営業所等を通じて締結した保険契約等に基づく年金等(⑭)
(13) 国内にある営業所等が受け入れた定期積金の給付補てん金等(⑮)
(14) 国内において事業を行う者に対する出資につき、匿名組合契約等に基づく利益の分配(⑯)
(15) その他政令(所令289)で定める国内源泉所得(⑰)


なお、租税条約によって国内源泉所得について上記と異なる定めがある場合には、租税条約が優先適用されることになります。

非居住者に対する課税方法

非居住者に対する課税方式としては、「恒久的施設」の有無、国内源泉所得の種類に応じて、それぞれ申告納税方式と源泉分離課税方式が採用されています。(所得税法164)

恒久的施設とは?

恒久的施設については、所得税法2条1項8の4で規定されており、3つの種類に区分されています。
(1)非居住者等の国内にある事業の管理を行う場所、支店、事務所、工場、作業場もしくは鉱山その他の天然資源を採取する場所またはその他事業を行う一定の場所。
(2)非居住者等の国内にある建設、据付けの工事またはこれらの指揮監督の役務の提供で1年を超えて行う場所(1年を超えて行われる建設工事等を含みます。)。
(3)非居住者等が国内に置く代理人等で、その事業に関し、反復して契約を締結する権限を有し、または契約締結のために反復して主要な役割を果たす者等の一定の者

恒久的施設帰属所得とは?

恒久的施設帰属所得については、所得税法161条1項1号において次のように規定されています。
(国内源泉所得)
第百六十一条 
一 非居住者が恒久的施設を通じて事業を行う場合において、当該恒久的施設が当該非居住者から独立して事業を行う事業者であるとしたならば、当該恒久的施設が果たす機能、当該恒久的施設において使用する資産、当該恒久的施設と当該非居住者の事業場等(当該非居住者の事業に係る事業場その他これに準ずるものとして政令で定めるものであつて当該恒久的施設以外のものをいう。次項及び次条第二項において同じ。)との間の内部取引その他の状況を勘案して、当該恒久的施設に帰せられるべき所得(当該恒久的施設の譲渡により生ずる所得を含む。)

そして、恒久的施設帰属所得の認識については、所得税法基本通達161-9において次のように記載されています。
(恒久的施設帰属所得の認識)
161-9 恒久的施設帰属所得は、非居住者の恒久的施設及びその事業場等(法第161条第1項第1号に規定する事業場等をいう。以下この項において同じ。)が果たす機能(リスクの引受け又はリスクの管理に関する人的機能、資産の帰属に係る人的機能その他の機能をいう。以下この項において同じ。)並びに当該恒久的施設及びその事業場等に関する事実の分析を行うことにより、当該恒久的施設が果たす機能、当該恒久的施設に帰せられるリスク、当該恒久的施設において使用する資産、当該恒久的施設に帰せられる外部取引、内部取引(同号に規定する内部取引をいう。161-11において同じ。)その他の恒久的施設帰属所得の認識に影響を与える状況を特定し、これらの状況を総合的に勘案して認識する。この場合において、当該機能及び当該事実の分析は、当該非居住者が行った外部取引ごと又は当該恒久的施設とその事業場等との間で行われた資産の移転、役務の提供等の事実ごとに、かつ、当該恒久的施設が当該非居住者から独立して事業を行う事業者であるものとして行うことに留意する。

非居住者に対する源泉徴収について

非居住者に対して国内源泉所得(上記(1)及び(15)の国内源泉所得は除く)の支払をする者は、その支払いの際、所得税を源泉徴収し、翌月10日までに国に納付する義務が発生します。
源泉徴収税率については、以下のとおりとなります。
●土地等の譲渡対価・・・10.21%
●利子等・・・15.315%
●定期積金の給付補填金等・・・15.315%
●上場株式の配当等・・・15.315%(措置法9の3)
●その他・・・20.42%
なお、租税条約によって、上記税率が免除又は軽減されることがあります。この場合には、支払日の前日までに「租税条約に関する届出書」を所轄税務署長に提出する必要があります。

最後に

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