不動産売却における譲渡損失の取扱いについて

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不動産を売却したことにより発生した譲渡損失については、原則としては、事業所得や給与所得といった他の所得との損益通算はできません。(所69、措31Ⅲ②、措32Ⅳ)
しかし、例外として、一定の要件を満たす場合には、損益通算及び繰越控除が認められます。
今回は、この例外的な取扱いとして、居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の規定を2つご説明いたします。

「居住用財産買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除(措41の5)」

マイホームを売却して、新たにマイホームを購入した場合において、一定の要件を満たす場合には、マイホームの売却における譲渡損失については、損益通算及び繰越控除が認められます。
この一定の要件については、以下の通りとなります。
(1)国内にあるマイホームの譲渡であること
以前に住んでいたマイホームの場合には、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡することが要件となります。(措41の5Ⅶ①ロ)
なお、マイホームを取り壊した場合やマイホームが災害により滅失している場合には、別途要件があります。(措41の5Ⅶ①ニ、措通41の5-5)
(2)譲渡の年の1月1日における所有期間が5年を超えていること
(3)譲渡の年の前年1月1日から譲渡の年の翌年12月31日までの間に居住用部分の床面積50㎡以上の国内にある家屋を取得すること(措41の5Ⅶ①、措令26の7Ⅵ)
(4)買換資産を取得した年の12月31日において償還期間10年以上の住宅ローンを有すること(措41の5Ⅶ①、④)
(5)買換資産を取得した年の翌年12月31日までの間に居住の用に供すること又は供する見込みであること(措41の5Ⅶ①)
(6)マイホームの売却先が配偶者、直系血族、生計一親族、内縁関係者、特殊関係法人など特別の関係にある者でないこと(措41の5Ⅶ①、措令26の7Ⅳ)
(7)売却の年の前年以前3年内の年において生じた居住用財産の譲渡損失についてこの特例の適用を受けていないこと(措41の5Ⅰ)
(8)売却した年の前年及び前々年に、居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の軽減税率の特例(措31の3)、居住用財産の譲渡所得の3,000万円の特別控除(措35Ⅰ)、特定の居住用財産の買換え・
交換の場合の長期譲渡所得の課税の特例(措36の2、36の5)の適用を受けていないこと(措41の5Ⅶ①)
(9)売却した年及びその年の前年以前3年内の年において特定居住用財産の譲渡損失の損益通算の特例の適用を受けていないこと(措41の5Ⅶ①)
(10)売却したマイホームの敷地面積が500㎡を超える場合には、500㎡を超える部分に対応する譲渡損失の金額については繰越控除を受けることができません。(措41の5Ⅶ③)
(11)繰越控除の適用を受ける年の12月31日において買換資産に係る償還期間10年以上の住宅ローンを有すること(措41の5Ⅳ)
(12)繰越控除の適用を受ける年の合計所得金額が3,000万円を超えないこと(措41の5Ⅳ)
なお、住宅ローン控除との併用は認められます。(措41㉔)

「特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除(措41の5の2)」

住宅ローンのあるマイホームを住宅ローンの残高を下回る価額で売却した場合において、一定の要件を満たす場合には、マイホームの売却における譲渡損失(売買契約日の前日における住宅ローンの残高から売却価額を差し引いた残額が上限)については、損益通算及び繰越控除が認められます。
この一定の要件については、以下の通りとなります。
(1)国内にあるマイホームの譲渡であること
以前に住んでいたマイホームの場合には、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡することが要件となります。(措41の5の2Ⅶ①ロ)
なお、マイホームを取り壊した場合やマイホームが災害により滅失している場合には、別途要件があります。(措41の5の2Ⅶ①ニ、措通41の5の2-7、措通41の5-5)
(2)譲渡の年の1月1日における所有期間が5年を超えていること
(3)マイホームの売買契約日の前日において、売却したマイホームに係る償還期間10年以上の住宅ローンを有し、マイホームの売却価額が住宅ローン残高を下回っていること(措41の5の2Ⅶ①④)
(4)マイホームの売却先が配偶者、直系血族、生計一親族、内縁関係者、特殊関係法人など特別の関係にある者でないこと(措41の5の2Ⅶ①、措令26の7の2Ⅳ)
(5)売却の年の前年以前3年内の年において生じた特定居住用財産の譲渡損失についてこの特例の適用を受けていないこと(措41の5の2Ⅰ)
(6)売却した年の前年及び前々年に、居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の軽減税率の特例(措31の3)、居住用財産の譲渡所得の3,000万円の特別控除(措35Ⅰ)、特定の居住用財産の買換え・交換の場合の長期譲渡所得の課税の特例(措36の2、36の5)の適用を受けていないこと(措41の5の2Ⅶ①)
(7)売却した年及びその年の前年以前3年内の年において居住用財産の譲渡損失の損益通算の特例の適用を受けていないこと(措41の5の2Ⅶ①)
(8)繰越控除の適用を受ける年の合計所得金額が3,000万円を超えないこと(措41の5の2Ⅳ)
なお、住宅ローン控除との併用は認められます。(措41㉔)

最後に

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