専従者給与と扶養控除について

個人

個人事業主の方が配偶者や子供に給与を支給している場合には、原則として必要経費としては認められませんが、一定の要件を満たす場合には、専従者給与として必要経費とすることが認められます。
今回は、専従者給与の要件、専従者給与と扶養控除の適用について説明いたします。

専従者給与の要件

専従者給与として認められる要件については、所得税法において次のとおり規定されています。(所57)

(1)青色事業専従者に支払われた給与であること

青色事業専従者とは、次の要件のいずれにも該当する人をいいます。
イ 青色申告者と生計を一にする配偶者その他の親族であること
ロ その年の12月31日現在で年齢が15歳以上であること
ハ その年を通じて6か月を超える期間(一定の場合には事業に従事することができる期間の2分の1を超える期間)、その青色申告者の営む事業に専ら従事していること

(2)「青色事業専従者給与に関する届出書」を納税地の所轄税務署長に提出していること

提出期限は、青色事業専従者給与額を算入しようとする年の3月15日(その年の1月16日以後、新たに事業を開始した場合や新たに専従者がいることとなった場合には、その開始した日や専従者がいることとなった日から2か月以内)までです。(所57Ⅱ、所規36の4Ⅲ)
この届出書には、青色事業専従者の氏名、職務の内容、給与の金額、支給期などを記載することになっています。
また、専従者が増える場合や、給与を増額する場合など、届出の内容を変更するためには、「青色事業専従者給与に関する変更届出書」を遅滞なく納税地の所轄税務署長に提出していること。(所令164Ⅱ、所規36の4Ⅱ)

(3)届出書に記載されている方法により支払われ、かつ、その記載されている金額の範囲内で支払われたものであること

(4)青色事業専従者給与の額は、労務の対価として相当であると認められる金額であること

【事例】飲食店を営む個人事業主の方が、学生である子供をアルバイトとして雇っているケース

飲食店を営む個人事業主の方が、学生である子供をアルバイトとして雇っているケースを考えてみます。
この場合、子供に支払うアルバイト代は必要経費にすることができるのでしょうか?
この点については、所得税法施行令において次のように規定されています。

(親族が事業に専ら従事するかどうかの判定)
第百六十五条 法第五十七条第一項又は第三項(事業に専従する親族がある場合の必要経費の特例等)に規定する居住者と生計を一にする配偶者その他の親族が専らその居住者の営むこれらの規定に規定する事業に従事するかどうかの判定は、当該事業に専ら従事する期間がその年を通じて六月をこえるかどうかによる。ただし、同条第一項の場合にあつては、次の各号のいずれかに該当するときは、当該事業に従事することができると認められる期間を通じてその二分の一に相当する期間をこえる期間当該事業に専ら従事すれば足りるものとする。
一 当該事業が年の中途における開業、廃業、休業又はその居住者の死亡、当該事業が季節営業であることその他の理由によりその年中を通じて営まれなかつたこと。
二 当該事業に従事する者の死亡、長期にわたる病気、婚姻その他相当の理由によりその年中を通じてその居住者と生計を一にする親族として当該事業に従事することができなかつたこと。
2 前項の場合において、同項に規定する親族につき次の各号の一に該当する者である期間があるときは、当該期間は、同項に規定する事業に専ら従事する期間に含まれないものとする。
一 学校教育法第一条(学校の範囲)、第百二十四条(専修学校)又は第百三十四条第一項(各種学校)の学校の学生又は生徒である者(夜間において授業を受ける者で昼間を主とする当該事業に従事するもの、昼間において授業を受ける者で夜間を主とする当該事業に従事するもの、同法第百二十四条又は同項の学校の生徒で常時修学しないものその他当該事業に専ら従事することが妨げられないと認められる者を除く。)
二 他に職業を有する者(その職業に従事する時間が短い者その他当該事業に専ら従事することが妨げられないと認められる者を除く。)
三 老衰その他心身の障害により事業に従事する能力が著しく阻害されている者

つまり、学生については、勉学が主であるため、原則として学生である期間は、「専ら従事する期間」に該当しないため、青色事業専従者とは認められず、生計を一にする子供に支払うアルバイト代は必要経費になないことになります。
ただし、例外として、昼間は事業に専従し、夜間は学校に通うなど、事業に従事することが妨げられないと認められる場合には、学生であっても青色事業専従者と認められるケースもあります。

専従者給与と扶養控除の適用について

専従者給与の適用を受ける場合には、同一の親族について扶養控除を受けることは認められません。
そのため、専従者給与と扶養控除については選択適用となります。
この点については、所得税法において次のように規定されています。

(扶養控除)
第八十四条 居住者が控除対象扶養親族を有する場合には、その居住者のその年分の総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額から、その控除対象扶養親族一人につき三十八万円(その者が特定扶養親族である場合には六十三万円とし、その者が老人扶養親族である場合には四十八万円とする。)を控除する。
2 前項の規定による控除は、扶養控除という。

所得税法2条1項
三十四 扶養親族 居住者の親族(その居住者の配偶者を除く。)並びに児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)第二十七条第一項第三号(都道府県の採るべき措置)の規定により同法第六条の四(定義)に規定する里親に委託された児童及び老人福祉法(昭和三十八年法律第百三十三号)第十一条第一項第三号(市町村の採るべき措置)の規定により同号に規定する養護受託者に委託された老人でその居住者と生計を一にするもの(第五十七条第一項に規定する青色事業専従者に該当するもので同項に規定する給与の支払を受けるもの及び同条第三項に規定する事業専従者に該当するものを除く。)のうち、合計所得金額が四十八万円以下である者をいう。

三十四の二 控除対象扶養親族 扶養親族のうち、次に掲げる者の区分に応じそれぞれ次に定める者をいう。
イ 居住者 年齢十六歳以上の者
ロ 非居住者 年齢十六歳以上三十歳未満の者及び年齢七十歳以上の者並びに年齢三十歳以上七十歳未満の者であつて次に掲げる者のいずれかに該当するもの
(1) 留学により国内に住所及び居所を有しなくなつた者
(2) 障害者
(3) その居住者からその年において生活費又は教育費に充てるための支払を三十八万円以上受けている者

つまり、扶養控除の要件である「控除対象扶養親族」の定義において、青色事業専従者に該当する者は除くと規定されているため、専従者給与と扶養控除については選択適用となります。
なお、配偶者控除についても同様に、専従者給与と配偶者控除については選択適用となります。

最後に

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