小規模宅地と使用貸借

相続

個人が、相続や遺贈によって取得した財産のうち、その相続開始の直前において被相続人または被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族の事業の用または居住の用に供されていた宅地等のうち一定のものがある場合には、その宅地等のうち一定の面積までの部分については、相続税の課税価格に算入すべき価額の計算上、一定の割合を減額することが認められます。
ここでは、被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族の事業の用に供されていた宅地等について、実質所得者課税の原則の点からご説明いたします。

実質所得者課税の原則とは

親から使用貸借で借り受けた建物を子が賃貸して家賃収入を得ている場合には、一見すると不動産所得の帰属は子にあるように見えますが、所得税法において実質所得者課税の原則があるため、建物の所有者である親に不動産所得が帰属するものと考えます。
そして、子が受け取る家賃収入については、親から子への贈与に該当するため、子は贈与税の申告が必要になるものと考えます。

(実質所得者課税の原則)
第十二条 資産又は事業から生ずる収益の法律上帰属するとみられる者が単なる名義人であつて、その収益を享受せず、その者以外の者がその収益を享受する場合には、その収益は、これを享受する者に帰属するものとして、この法律の規定を適用する。

(資産から生ずる収益を享受する者の判定)
12-1 法第12条の適用上、資産から生ずる収益を享受する者がだれであるかは、その収益の基因となる資産の真実の権利者がだれであるかにより判定すべきであるが、それが明らかでない場合には、その資産の名義者が真実の権利者であるものと推定する。

なお、実質所得者課税の原則が適用された判決として、大阪高裁令和4年7月20日判決があります。
「不動産所得である本件各土地の駐車場収入は、本件各土地の使用の対価として受けるべき金銭という法定果実であり(民法88条2項)、駐車場賃貸事業を営む者の役務提供の対価ではないから、所有権者がその果実収取権を第三者に付与しない限り、元来所有権者に帰属すべきものである。」

小規模宅地と使用貸借について

被相続人から使用貸借により借り受けた、被相続人名義の建物を転貸した場合における賃料については、実質所得者課税の原則から、被相続人の不動産所得になるものと考えられます。
この賃料を相続人が受領している場合には、被相続人からのみなし贈与として、贈与税が課税されるものと考えます。
そして、小規模宅地特例の適用を検討する場合には、実質所得者課税の原則に基づき、生計一親族の事業用宅地等ではなく、被相続人の事業用宅地等に該当するため、被相続人の事業の用に供されていた宅地等としての要件を満たしているかを確認する必要があります。

最後に

弊所は、お客様と共に悩み、考え、お客様の成長と発展に貢献できる経営パートナーとしてのサービスをご提供いたします。
お気軽に当事務所にお問い合わせください。
      ⇩
税理士小林繁樹事務所のホームページ

免責事項
本記事を掲載するにあたって、情報の正確性について細心の注意を払っておりますが、その内容を保証するものではなく、何らの責任を負うものではありません。
必ずしも内容の全部を表現したものではないため、実務における判断を行う際は、必ず専門家にご相談ください。

タイトルとURLをコピーしました