贈与により取得した資産の取得価額について

法人

テナント物件については、基本的には、スケルトンの状態で貸付け、借主が内装を行い、退去時には借主に原状回復が義務付けられています。
そのうえで、貸主と借主の合意によって、借主の原状回復義務が免除され、内装を壊さずに現状引渡しがなされるケースもあります。
今回は、不動産賃貸業を営む法人が、借主の内部造作や備品を無償で現状のまま引渡しを受けた場合における、貸主側の法人税の取扱いについてご説明いたします。

減価償却資産の取得価額について

贈与により取得した減価償却資産の取得価額については、法人税法施行令54Ⅰ⑥において次のように規定されています。

(減価償却資産の取得価額)
第五十四条 減価償却資産の第四十八条から第五十条まで(減価償却資産の償却の方法)に規定する取得価額は、次の各号に掲げる資産の区分に応じ当該各号に定める金額とする。
六 前各号に規定する方法以外の方法により取得をした減価償却資産 次に掲げる金額の合計額
イ その取得の時における当該資産の取得のために通常要する価額
ロ 当該資産を事業の用に供するために直接要した費用の額

つまり、法人が資産を贈与により取得した資産の取得価額は、時価で資産を計上し、同額の受贈益を計上することになります。(法人税法22Ⅱ)

減価償却資産の時価について

減価償却資産の時価については、理論的な市場価値を把握する必要があります。そして、この時価については、あくまでも「取得のために通常要する価額」であるため、売値ではなく、買値を把握する必要があります。
引き取り業者が提示する見積金額はあくまでも売値であるため、見積金額が市場価値と大幅にかけ離れ、妥当でない場合には、中古市場での買値を見積もることになります。
ただし、内部造作のように中古市場での買値を把握することが不可能といった場合には、法人税法基本通達9-1-19により、旧定率法又は定率法による帳簿価額を時価として計上することが考えられます。

(減価償却資産の時価)
9-1-19 法人が、令第13条第1号から第7号まで《有形減価償却資産》に掲げる減価償却資産について次に掲げる規定を適用する場合において、当該資産の価額につき当該資産の再取得価額を基礎としてその取得の時からそれぞれ次に掲げる時まで旧定率法により償却を行ったものとした場合に計算される未償却残額に相当する金額によっているときは、これを認める。(昭55年直法2-8「三十一」により追加、平12年課法2-7「十六」、平17年課法2-14「九」、平19年課法2-3「二十一」、平19年課法2-7「九」、平21年課法2-5「七」により改正)
(1) 法第33条第2項《資産の評価換えによる評価損の損金算入》 当該事業年度終了の時
(2) 同条第4項《資産評定による評価損の損金算入》 令第68条の2第4項第1号《再生計画認可の決定等の事実が生じた場合の評価損の額》に規定する当該再生計画認可の決定があった時
(注) 定率法による未償却残額の方が旧定率法による未償却残額よりも適切に時価を反映するものである場合には、定率法によって差し支えない。

【参考】内部造作の無償譲渡(借主側)

内部造作を家主に譲渡しても、家主に何か利益を供与する意図が全くなく、原状回復費用を節約するといった経済的合理性がある場合には、寄付金課税の問題は生じないとする見解があります。
ただし、そもそも資産の時価は一つであり、借主と家主で時価の認識が異なるのは不整合との意見もあり、争点となるものと考えます。

最後に

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