外注費と給与について

法人

外注費については、税務調査において指摘されやすい項目の一つになります。
外注費と給与について、明確に区分することなく、安易に外注費に計上していませんか?
ここでは、外注費が給与と認定された場合のリスク、外注費と給与の判定ポイントについてご説明いたします。

外注費が給与と認定された場合のリスク

税務調査において、外注費として計上していたものが、給与と認定された場合には、以下のものを追加で納付する必要があります。

(1)源泉所得税

源泉徴収義務については、所得税法183条において次の通り規定されています。
(源泉徴収義務)
第百八十三条 居住者に対し国内において第二十八条第一項(給与所得)に規定する給与等(以下この章において「給与等」という。)の支払をする者は、その支払の際、その給与等について所得税を徴収し、その徴収の日の属する月の翌月十日までに、これを国に納付しなければならない。

外注費が給与と認定された場合には、源泉所得税の納付が漏れていたことになります。
そのため、源泉所得税を納付するとともに、納付漏れ金額の10%に相当する不納付加算税を納付しなければなりません。
仮に、月額30万円を外注費として支払っていたものが、給与と認定された場合の源泉所得税は、「扶養控除等申告書」が提出されていないため、乙欄での計算となり、月額53,700円(年間65万円)の納付漏れとなります。
不納付加算税と合わせると、年間約70万円の負担増となります。

(2)消費税

外注費であれば、仕入税額控除の対象となるため、消費税の納税額を減らすことができます。
しかし、外注費が給与と認定された場合には、この仕入税額控除が認められないため、消費税の納付が漏れていたことになります。
そのため、消費税を追加納付するとともに、納付漏れ金額の10%(15%)に相当する過少申告加算税、場合によっては重加算税(35%)を納付しなければなりません。

(3)延滞税

源泉所得税、消費税ともに納付が漏れていた金額に対して、延滞税が発生します。

(4)社会保険料・労働保険料

外注費が給与と認定された場合には、従業員としての扱いになるため、社会保険や労働保険の対象となります。
そのため、社会保険、雇用保険ともに資格取得の手続きを行うとともに、会社負担分としての社会保険料・労働保険料を納付しなければなりません。

外注費と給与の判定ポイント

昭和56年4月24日最高裁判決において、事業所得(外注費)と給与所得(給与)の判断基準が次のように示されています。
「事業所得とは、自己の計算と危険において独立して営まれ、営利性、有償性を有し、かつ反覆継続して遂行する意思と社会的地位とが客観的に認められる業務から生ずる所得をいい、
これに対し、給与所得とは雇傭契約又はこれに類する原因に基づき使用者の指揮命令に服して提供した労務の対価として使用者から受ける給付をいう。なお、給与所得については、
とりわけ、給与支給者との関係において何らかの空間的、時間的な拘束を受け、継続的ないし断続的に労務又は役務の提供があり、その対価として支給されるものであるかどうかか重視されなければならない。」
この最高裁判決における判断基準が、その後の裁判においても先例として採用されているものと考えます。
なお、税務上の実務においては、次の5つの事項を総合的に勘案して判定されています。(法令解釈通達 平成21年12月17日課個5-5、法人税法基本通達1-1-1)

  1. 他人が代替して業務を遂行すること又は役務を提供することが認められるかどうか。
  2. 報酬の支払者から作業時間を指定される、報酬が時間を単位として計算されるなど時間的な拘束を受けるかどうか。
  3. 作業の具体的な内容や方法について報酬の支払者から指揮監督(業務の性質上当然に存在する指揮監督を除く。)を受けるかどうか。
  4. まだ引渡しを了しない完成品が不可抗力のため滅失するなどした場合において、自らの権利として既に遂行した業務又は提供した役務に係る報酬の支払を請求できるかどうか。
  5. 材料又は用具等を報酬の支払者から供与されているかどうか。

【参考】
東京国税局「給与所得及び事業所得の判定検討表」

最後に

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